神様のボート/江國 香織レビュー
すぎたことはみんな箱のなかに入ってしまうから、絶対になくす心配がないの。
| 転々と引越を繰り返すママと娘の、静かな生活を描いたストーリー。 と書いてみてもまるっきり紹介にならないですね。その文章から伝わってくるものが多すぎて、紹介するのが非常に難しい作品です。何とか紹介してみますので、続きも読んでみてください。 | ![]() |
「ホテルカクタス」から、江國作品を読もうと思って「こうばしい日々」に続いて「神様のボート」を読んでみました。はっきり言って怖い小説だな、と思いました。
江國さん自身が自分で書いておられますが、狂気の物語です。それも真綿で首を絞めるような、静かで柔らかくて甘美な狂気。物語のほとんどは母娘の表面的には幸せそうな会話やコミュニケーションがメインに描かれていますから、ある種の憧憬を抱かずにはいられません。ですが、実際にそこで語られているのは、自らを現実から切り離してしまった母・葉子と、彼女が自らの周りに作り上げたシャボン玉のような世界に住まわされている娘・草子の、狭く、もろい、歪んだ生活です。
そうした読者が持つ印象と、そこで語られている世界のギャップが、この小説の危険性であり、また魔力にも似た魅力だと感じます。
パパ、ママ、子供という最小単位の家族を形成する3つの頂点を持つ三角形から、“パパ”という頂点をなくした葉子と草子が続ける不安定な生活が、最後にたどり着くのはどんな形に落ち着くのか。これから読もうという人は、途中からいたたまれない気持ちで読むことになると思いますが、読んで良かったと思う作品であることは間違いないと思います。
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| 現代小説 | 江國香織 |
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