ストロベリーナイト/誉田哲也レビュー
鼻腔から脳に直接入り込み、増殖し、最終的には脳味噌をドロドロに溶かしてしまう
| 初、誉田哲也作品です。
「こんな警察小説を待っていた!」という帯に引かれて購入。
帯の文句はさておき、一気に読ませる筆運びはなかなかのものでした。 | ![]() |
まず主人公の設定がなかなかすごい。主人公となっているのは警視庁捜査一課で10係を率いる主任、姫川玲子。
30歳目前、恐れ知らずの美人刑事です。
警察小説というと、どうしても権力、派閥争いを繰り返しながら捜査を進める男たちの物語を思い描いてしまいますが、主人公に女刑事を選んだことで、物語に一気に広がりが出ています。
もちろん美人なので色恋ごともありますし、彼女が警察に入るきっかけとなった過去の事件、さらには“ガンテツ”と呼ばれる憎々しい公安上がりの時代錯誤的刑事との内輪争い、実家との確執など、1人のリアルな女刑事の生活が描かれ、従来の警察小説にはない、人間臭さが漂っています。
彼女が捜査にあたることになった、ビニール袋にくるまれた惨殺死体を発端にした事件は、やがて未曾有の殺人事件に発展し、思わぬ方向へと向かっていきます。
情報の少ない難事件で、序盤の期待感はかなり高いものがあります。
が、惜しいのはこれだけの多焦点の物語なのに、筆が速すぎることでしょうか。
テンポは良いのですが、さくさくと進んでしまうストーリーに違和感を感じてしまいます。
特に色恋ごとのシーンはあまり意味がなく、支流のひとつになって立ち消えになってしまっています。続きのシリーズの伏線としては有りかもしれませんが、本作品だけを取り出してみたときには、ばっさりとカットしてしまっても良かったかなと。
逆に非常に面白かったのが、“ガンテツ”と繰り広げる捜査合戦です。
いかに相手を出し抜くか、という警察小説の王道を“ガンテツ”という名脇役が盛り上げて、一級のエンターテイメントになっています。
どうやら姫川玲子を主人公としたシリーズもののようなので、どちらかと言うと作者は警察小説と言うよりは女刑事の成長譚として書いているのかも知れません。
きっと次回作ではまた新たな展開を見せつつ、本作品の支流がまたメインストームにもどってくることもあるでしょう。主人公と共にもう少し物語に厚みが出てくることを期待しましょう。
ちなみに、今回選んだ一文の鼻腔から脳に直接入り込み、増殖し、最終的には脳味噌をドロドロに溶かしてしまうというのは、現実に存在する寄生アメーバ「ネグレリアフォーレリ」の説明です。
SFのような恐ろしいアメーバですが、実在するとは驚きです。
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