告白/湊かなえレビュー
私は聖職者になりたいなどと思ってはいません
| 今年、話題になった湊かなえのデビュー作「告白」を読んでみました。
本の帯にも「このクラスの生徒に殺されたのです」と引用されている通り、中学校で起きた殺人事件に関わる生徒や先生が主な登場人物となっている、重い題材を扱ったミステリーです。 | ![]() |
「第29回小説推理新人賞」を受賞し、今年の「このミステリーがすごい!」の第4位にランキング。
少年犯罪という重い題材を取り上げてのデビュー作ということに、著者の並々ならぬ力量を伺わせます。
物語は愛娘を失った女性教師が、終業式後にクラスで行った最後の挨拶から始まります。第1章をまるまる使ったこの女性教師の告白から、一気に物語に引き込まれます。
クラスでの挨拶という場ですから、告白の言葉は淡々と静かなものなのですが、それが逆に凄みを増し、特に最後に明かされる彼女のたくらみには、実際に背筋が凍るほどの恐怖を感じます。
1章以降は、事件と事件以後の出来事を中心に語られるのですが、その書き方が見事。章ごとに違う登場人物の告白という形で書かれる事件は、主体の違いにより異なる様相を見せ、“関係者の数だけ事件がある”という当たり前のことを、浮き彫りにして見せます。
登場人物たちが告白する自らの心情と、他者への視線は、現代社会においてはどれもありきたりで、目を引くものではありません。しかし例えば友人だと思っていた人間と、その友人の実際の心情、或いは、止むに止まれず離ればなれになったはずの母親と、その母親の実際の生活など、いずれの登場人物にも見いだされる内面世界と現実との乖離が、次々と露わになるにつれて際だってくるのが、個人対社会という図式です。
他者=社会とうまく関係を切り結ぶことが出来ない登場人物たちが、相互に異相であることを理解できずに、同居してしまうこと。これは現代の都市そのものだと言っても良いでしょうし、学校というシステムだと言っても良いでしょう。
そこから浮かび上がってくるのは、異相であることを了解できない故の恐ろしさ、それを生み出しているであろう自己中心的な考えの恐ろしさです。
登場人物の1人が最終章で指摘している“自己中心的な考え”が、この事件全ての発端にあるということこそ、作者の指摘したかった“悲劇の萌芽”なのではないかと、考えます。
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| ミステリー | 湊かなえ |
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