犯人に告ぐ/雫井脩介レビュー
その昔、己の尻尾を噛んだ哀れなドブネズミ
| 数ある警察小説の中でも、一際異彩を放つ傑作でした。
豊川悦司主演の同名タイトルで映画化されていますが、確かに映像としても見応えのある作品になるであろうドラマ性と、抜群な匙加減で進められるストーリー展開がページを繰る手を止められなくさせます。 | ![]() |
![]() |
連続少年殺人事件、さらには女性ニュースキャスターへの脅迫という“劇場型犯罪”に対してとられた前代未聞の捜査手法、“劇場型捜査”。捜査責任者がニュース番組からTVを通じて、“バッドマン”と名乗る犯人に語りかけるというこの“劇場型捜査”は果たして、犯人を捕らえることに成功するのか?
文庫本上下で合わせて770ページの大作。一気呵成に読み進めつつも、次第に残りのページ数で「犯人を逮捕することができるのか?」という疑問が頭の片隅をよぎるほど、捜査は遅々として進みません。
過去の事件とのしがらみを引きずったまま、カメラの向こうにいる見えない“バッドマン”に対峙する主人公、内部からの情報漏れにより次第に強くなる彼へのバッシング、長期戦となり、泥沼化していく捜査が、抑制の効いた文章で淡々と語られることで、逆に緊張感がじわじわと高まってきます。
そして作品に落ち着きをもたらしているのは、主人公の分厚さです。過去に“トラウマ”と言ってもよいほどの捜査ミスを犯した主人公は、かつての事件とも向き合いつつ、辛苦をなめながらも犯人逮捕への道を一歩一歩、足を進めていきます。冒頭の一文、“己の尻尾を噛んだ哀れなドブネズミ”とはこの主人公のことですが、過去の失敗から警察機構内でアウトサイダーになってしまっている主人公を表す言葉として、“ドブネズミ”とは悲しいほどにしっくりきます。
“連続少年殺人事件”、“TVを通じての捜査”と下手をすると作者も飲み込まれてしまうほど舞台はド派手ですが、厚みのある主人公が中央にどんと置かれることで、落ち着きを持って読み込める優れたエンターテイメント小説に仕上がっており、正月休みのお薦めの一冊です。
評価<![]()
![]()
![]()
![]()
>


![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
タグ |
| ミステリー | 雫井脩介 |
関連記事 |
:白銀を踏み荒らせ/雫井脩介ミニレビュー :火の粉/雫井脩介 ミニレビュー :虚貌/雫井脩介 ミニレビュー :木乃伊男/蘇部健一 ミニレビュー :亜愛一郎の狼狽/泡坂妻夫 ミニレビュー |

















![首都高速道路 Metropolitan Expressway [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51A4sVZwbzL._SL160_.jpg)
![首都高Night-View(ナイトビュー) [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/513qpMF3CEL._SL160_.jpg)
