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ひとがた流し/北村薫 ミニレビュー

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闇の中に浮かんでいた、華やかな電気の城は、ただ、あの時だけ存在した、幻のようでもある。

電車の中で読むべきではなかったですね。「しくしくと痛む」と云う表現がありますが、読み進むにつれてそれに近い苦しさがどうしようもなく胸に渦巻きました。思い返しても息が詰まります。

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女性三人の友情を描いた短編集。と書いてしまえば簡単ですが、章ごとに違う登場人物の視点から描かれ、色んな読み方もできると思います。

個人的には、「複数の視点から描かれる」ことによる著者の意図としては、感情移入させないというものじゃないかと思います。もちろん様々な意図があるのでしょうが、一人ないしは二人だけの視点ではなく、複数の視点が提供されることにより、物語はいくつものふくらみを持ち、より俯瞰的なものになっていきます。

俯瞰的な視座から見えてくるのは、川に例えて言うならば、物語の本流だけでなく、様々な支流も含めた河川全体の流域のような広がりのようなものでしょうか。川が川だけでなく川と一体になっている河川敷や周辺から流れ込む支流などから成り立っているように、物語には描かれていない登場人物たちの過去や生活もあります。

直接の主人公たち以外の人たちから見た話が織り込まれることによって、この物語の外に広がっている景色までもが見えるような、不思議な効果があるような気がします。

そうして語られる女性たちの友情は、地に足がついたというか生活に根差したものというか、目に見えなくも非常に緊密なものであるように感じます。

他にも言いたいことは山ほどあるような気がする特別な一冊ですが、声に出そうとすると言葉にできません。

女性だけでなく全ての人に読んで欲しい、この1年で最も心にきた本です。

評価<spacerspacerspacerspacerspacer

>>北村薫@Amazon

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