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語り女たち/北村薫 ミニレビュー

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海原を旅して来た秋風の手が、もっといたいと駄々をこねる夏の頭を、撫で始める。


それなりに本を読んできてはいますが、日本語を読めて幸せだなと思わせてくれる作家・作品にはなかなか出会いません。

殊に私の場合、傾向が傾向なだけに(ミステリやエンタテイメントが好き)その方面では本当に少ない気がします。

そんななかで、北村薫の作品は、日本語の美しさやおかしさを教えてくれる貴重な宝。
特にこの不思議な物語を集めた「語り女たち」には上に引用した文章のように、何かしら想像力の膨らむ文章がそこかしこに散らばっています。

下手に説明なんかしてもしょうもないので、いくつか引用させてもらいましょう。

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学生時代には、靴と足跡のように、いつもくっついて行動していました。
〜Ambarvaliaより


その頃には、ネギが元気に育っていました。青緑の絵の具で、すっすっと描いたような太い線が、地から上へと伸びています。
〜梅の木より


「じゃあ、《朝飯前》、下さい」
〜笑顔より


さやさやという葉擦れの音は、右からも左からも迫り、高みからも、絶えず箔を撒くように降ってきました。
〜緑の虫より


心の片隅にでもそっととっておきたくなるような文じゃないでしょうか。
随所で発揮されるユーモアと言葉遊びのセンスも、いつもながら上品かつ微笑ましい。"ほっ"という音までしそうな柔らかな安心感みたいなものまで感じさせてくれます。

そしてどうしてこうも女性を描くのがうまいのか。ひとつひとつのエピソードで書き分けられる女性たちと、彼女たちの体験したファンタジーは見事に融和していて、とても男性とは思えません。

<体験したり、人づてに聞いたりした、比較的単純なことを、飾り気なく話していくのが物語の原点でしょう>
本作を描くにあたって著者が語ったこの言葉通り、聞き手の男と語り手の女が紡ぎ出すおかしくて不思議な物語たち。

何度も手に取る作品になるような気がします。

評価<spacerspacerspacerspacerspacer

>>北村薫@Wikipedia
>>北村薫@Amazon


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