Sizenoteでタグ 北村薫が指定されているエントリー:6

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語り女たち/北村薫 ミニレビュー

海原を旅して来た秋風の手が、もっといたいと駄々をこねる夏の頭を、撫で始める。


それなりに本を読んできてはいますが、日本語を読めて幸せだなと思わせてくれる作家・作品にはなかなか出会いません。

殊に私の場合、傾向が傾向なだけに(ミステリやエンタテイメントが好き)その方面では本当に少ない気がします。

そんななかで、北村薫の作品は、日本語の美しさやおかしさを教えてくれる貴重な宝。
特にこの不思議な物語を集めた「語り女たち」には上に引用した文章のように、何かしら想像力の膨らむ文章がそこかしこに散らばっています。

下手に説明なんかしてもしょうもないので、いくつか引用させてもらいましょう。

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学生時代には、靴と足跡のように、いつもくっついて行動していました。
〜Ambarvaliaより


その頃には、ネギが元気に育っていました。青緑の絵の具で、すっすっと描いたような太い線が、地から上へと伸びています。
〜梅の木より


「じゃあ、《朝飯前》、下さい」
〜笑顔より


さやさやという葉擦れの音は、右からも左からも迫り、高みからも、絶えず箔を撒くように降ってきました。
〜緑の虫より


心の片隅にでもそっととっておきたくなるような文じゃないでしょうか。
随所で発揮されるユーモアと言葉遊びのセンスも、いつもながら上品かつ微笑ましい。"ほっ"という音までしそうな柔らかな安心感みたいなものまで感じさせてくれます。

そしてどうしてこうも女性を描くのがうまいのか。ひとつひとつのエピソードで書き分けられる女性たちと、彼女たちの体験したファンタジーは見事に融和していて、とても男性とは思えません。

<体験したり、人づてに聞いたりした、比較的単純なことを、飾り気なく話していくのが物語の原点でしょう>
本作を描くにあたって著者が語ったこの言葉通り、聞き手の男と語り手の女が紡ぎ出すおかしくて不思議な物語たち。

何度も手に取る作品になるような気がします。

評価<spacerspacerspacerspacerspacer

>>北村薫@Wikipedia
>>北村薫@Amazon


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ひとがた流し/北村薫 ミニレビュー


闇の中に浮かんでいた、華やかな電気の城は、ただ、あの時だけ存在した、幻のようでもある。

電車の中で読むべきではなかったですね。「しくしくと痛む」と云う表現がありますが、読み進むにつれてそれに近い苦しさがどうしようもなく胸に渦巻きました。思い返しても息が詰まります。

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女性三人の友情を描いた短編集。と書いてしまえば簡単ですが、章ごとに違う登場人物の視点から描かれ、色んな読み方もできると思います。

個人的には、「複数の視点から描かれる」ことによる著者の意図としては、感情移入させないというものじゃないかと思います。もちろん様々な意図があるのでしょうが、一人ないしは二人だけの視点ではなく、複数の視点が提供されることにより、物語はいくつものふくらみを持ち、より俯瞰的なものになっていきます。

俯瞰的な視座から見えてくるのは、川に例えて言うならば、物語の本流だけでなく、様々な支流も含めた河川全体の流域のような広がりのようなものでしょうか。川が川だけでなく川と一体になっている河川敷や周辺から流れ込む支流などから成り立っているように、物語には描かれていない登場人物たちの過去や生活もあります。

直接の主人公たち以外の人たちから見た話が織り込まれることによって、この物語の外に広がっている景色までもが見えるような、不思議な効果があるような気がします。

そうして語られる女性たちの友情は、地に足がついたというか生活に根差したものというか、目に見えなくも非常に緊密なものであるように感じます。

他にも言いたいことは山ほどあるような気がする特別な一冊ですが、声に出そうとすると言葉にできません。

女性だけでなく全ての人に読んで欲しい、この1年で最も心にきた本です。

評価<spacerspacerspacerspacerspacer

>>北村薫@Amazon

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盤上の敵/北村薫 ミニレビュー

再読。北村薫らしからぬ峻烈な内容ですが、間違いなく傑作。

目を背けたくなるような悪意と生命への優しい視線、そして人物の背景を描く日常のエピソードは、男性・北村薫しか描けないもの。
著者自身が前書きで書いているように、確かにこの物語は必然だと思う。

この物語を描ききった北村薫の強さと、心のこもった前書きに見られる優しさに感動します。

まだ未読なミステリー好きの人は今すぐにでも読むことをお薦めします。
でも著者の前書きに書いてあることは本当なので、弱っているときには注意してください。

評価<spacerspacerspacerspacerspacer

>>北村薫@Amazon

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: 紙魚家崩壊/北村薫 ミニレビュー
: ニッポン硬貨の謎/北村薫 ミニレビュー
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紙魚家崩壊/北村薫 ミニレビュー

北村さんだったので期待しすぎてしまった。

けれど作者も楽しみながら書いたであろう「新釈おとぎばなし」は"カチカチ山"をミステリーにするという他では読めない異色作なので、それだけでも私には読む価値があった。

他の作品では「白い朝」がいいですね。キュートです。

評価<spacerspacerspacerspacerspacer

>>北村薫@Amazon

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ニッポン硬貨の謎/北村薫 ミニレビュー

作者が楽しみながら書いたことがよく分かる、非常にクオリティの高い"同人小説"

なので、北村薫好きよりも、クイーン好き向け。北村作品として期待すると肩すかしなので要注意です。

それでも充分面白いので、この路線もありなんじゃないかと思います。
それと無性にクイーンの国名シリーズを読み返そうか、という気になる作品です。

評価<spacerspacerspacerspacerspacer

>>北村薫@Amazon

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: 盤上の敵/北村薫 ミニレビュー
: 紙魚家崩壊/北村薫 ミニレビュー
: 空飛ぶ馬/北村薫一文レビュー

空飛ぶ馬/北村薫一文レビュー

入り組んだ胡桃の殻の中にも入れそうなほどに縮み、それでも懸命にか弱い羽根を動かしていた。

この一冊が北村薫のデビュー作と知ったときは、「マジ!?」と声を上げた記憶があります。それは隅々まで空気が存在する完成された世界がそこに書かれていたからで、デビュー作というよりは寧ろ、代々受け継がれてきた家庭料理が出せる、安心しておいしいと言える味わいを感じさせる、どちらかというと老成したような(失礼かな)作品だったからです。

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

>>続きを読む "空飛ぶ馬/北村薫一文レビュー"
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